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0322-岩手県 アーカイブ

2009年07月23日

地域支援事業:岩手県

■岩手県:藤村正樹(岩手県ツキノワグマ研究会 事務局長)

目的:
岩手県盛岡市で実施されている官学民によるクマ被害対策活動への支援。

方法:
ツキノワグマによる被害が毎年発生し、複数のクマが有害駆除で捕殺されている
盛岡市猪去地区の自治会では、岩手大学の教授、学生、盛岡市動物公園公社の
獣医師、盛岡市の担当者、猟友会関係者、NGO関係者などからの支援を受け、
平成19年度からクマ被害対策に取り組んでいる。

本支援事業では、猪去地区自治会が実施しているクマ被害対策において、
不足している資材を提供し、さらに10月に予定されている地域の集まりにおいて、
専門家や学生による発表を中心としたミニシンポジウムを開催することにより、
被害農家が自ら取り組んでいるクマ被害対策の継続とさらなる促進を、物心両面から支援する。

実施主体は(自立を促すためにも)盛岡市猪去地区自治会とし、
日本クマネットワーク、岩手大学、盛岡市、盛岡市動物園公社、盛岡市猟友会、
NGOのそれぞれの関係者は、自治会をサポートする形式とする。

期待される成果:
多数の外部者(主に学生)が無償のボランティアで、被害農家の畑やりんご園周辺の
藪や草を刈り払いし、電気柵の設置を手伝うことにより次の成果が期待できる。

(1)
学生ボランティアに触発され、被害農家にクマ被害対策への自立心が芽生え、
地域での共同作業(連帯)が促進されることが期待できる。

(2)
被害農家にとって、自分たちの息子や孫と同じ世代の多数の学生が地域に入り、
地域住民と共同で汗を流す(地元民と交流)ことにより、被害農家特有の疎外感が払拭され、
さらに地域住民に活力が蘇ることも期待される。

(3)
(既に設置されている)電機柵の設置距離を延長、拡充することにより、
対策実施農地へのクマによる農地侵入件数及び被害面積は大きく減少することが見込まれる。
さらに、被害対策に関心の薄かった農家が(積極的に対策に取り組む)他の農家や
ボランティアの活動に触発され、被害対策に関心を持つことが期待される。
また、これまで被害対策に消極的だった農家も、自発的に電気柵を購入するなど、
積極的に被害対策に取り組むことも期待される。

(4)
市役所の担当者や被害農家、猟友会会員、NGO関係者は、簡便な電機柵設置と
草刈により出没及び被害が軽減することを実感でき、また周辺農家への普及促進が期待される。
さらに、当該地区の被害対策の取り組みがモデル事業となり、盛岡市内の他の地域への
普及促進も期待される。

(5)
被害農家を含む地域住民の、クマ学術調査に対する理解と協力を得られることが期待できる。
さらに、研究者や学生、市の担当者、猟友会関係者が共同作業を継続的に実施し、
コミュニケーションを円滑にすることにより、地域の自治会を中心とした官学民ネットワークが
形成され、ツキノワグマに対しての地域住民の正しい知識と理解が深められことが見込まれる。

(6)
1〜5の結果、当該地域での人とクマとの軋轢が減少し、有害捕獲によるツキノワグマの
捕殺も減少することが期待される。
さらに、被害対策に積極的な農家に、電気柵や草刈以外の被害対策にも関心が広がりつつあるので、
本事業を通してJBNが蓄積している様々な被害防除策や情報を彼らに伝授することにより、
他の地域のモデルとなりうるような、被害農家で構成された高度な経験と技術を有した
被害対策実施集団が育成されることが期待される。

スケジュール:
7-9月  草刈・藪払い・電機柵設置・音響装置設置
      調査報告会
10月  発表会・ミニシンポジウム

2010年08月14日

事業報告:岩手

平成21年度日本クマネットワーク地域支援事業(岩手県盛岡市)
岩手県:藤村正樹(岩手県ツキノワグマ研究会・事務局)

目的:岩手県盛岡市で実施されている官学民によるクマ被害対策活動への支援。

本年度事業と結果:ツキノワグマによる被害が毎年発生し、複数のクマが有害駆除で捕殺されている盛岡市猪去地区の自治会では、岩手大学の教授、学生、盛岡市動物公園公社の獣医師、盛岡市の担当者、猟友会関係者からの支援を受け、平成19年度からクマ被害対策に取り組んでいる。

本年度の支援事業では、猪去地区自治会が実施しているクマ被害対策において、自治会から要望のあったセンサー連動の威嚇音発生装置(写真)を提供した。それによって、電気柵ではカバーできない地域でのクマの侵入防止に一定の効果が認められ、地域の被害防除の取組の助けとなった。

さらに、JBNが提供したセンサー連動の威嚇音発生装置の効果が高く評価を受け、翌年(平成22年)は猪去地区のNGOが盛岡市と協議を行い、センサー連動の威嚇音発生装置を自ら購入することに繋がった。

また、10月25日に開催された「猪去の里祭」においては、猪去自治会と岩手大学ツキノワグマ研究会が共同企画した、岩手大学クマ研学生と地域住民との交流会を、本事業では支援を行った。地域住民を対象とした学生によるクマの調査研究の発表は、住民のクマに対する理解と、クマ被害防除の取組に対する認識を深めることに役立った。

以上のことから、野生動物(ツキノワグマ)の被害を恒常的に受け続け、マイナスのマインドに流される傾向があり、且つ地域内の連帯も薄れつつあった都市近郊の農耕地域において、外部からの助言、労力、資金(資材)などの提供を上手に行えば、地域の結束を強め、問題に積極的に対処(被害対策)しようというプラスのマインドに転換することが可能であることが示唆された。ただし、あくまで主人公は対象となる地域の住民であって、外部からの提供を快く受け入れて頂けるように、両者の間に入ってコーディネイトする機関(団体)や人が必要である。

岩手県盛岡市で実施されている官学民によるクマ被害対策活動が比較的順調に推移している原因として、

1. 猪去地区をフィールドにした岩手県大学ツキノワグマ研究会の長年の実績(調査、研究)により、地域住民に一定の理解と外部の人間を受け入れる土壌が作られていた。
2. 学生の活動や地域の取組を支援する岩手大学の体制が整えられていた。
3. 地元住民と外部との両者を上手くコーディネイトしてくれる人材が、行政(盛岡市農政部)の中にいた。
4. 盛岡市動物園公社や猟友会、岩手県ツキノワグマ研究会など、地域の取組をバックアップする団体や人材が揃っていた。
5. 都市部近郊という地域的特色として、外部の人間や団体、新しい考えや技術を比較的受け入れやすい土壌であった。ただし、このことは筆者の個人的な感想である、

今後の課題と考察:今後モチベーションをどう維持し続けるかが課題だと思う。仮に外部からの支援が無くなったとしても、地域住民の自助努力により被害対策が維持され、結果的に被害が軽減され人とクマとの共存が図られることが望ましい。


iwate1001.jpg

購入した威嚇音発生装置