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0325-長野県(評価) アーカイブ

2009年07月23日

地域支援事業:長野県(評価)

■長野県の評価:桜井良(フロリダ大学・NPO法人信州ツキノワグマ研究会)

目的:
本調査では、2008年度日本クマネットワークの地域支援助成事業である
長野県の「都会の人を巻き込んだ柿もぎ活動と高校生に対する
農林業被害防止に関する教育」の事業評価を実施する。

評価を行う目的は、
・事業目標の達成度を測定すること
・第二次的な成果や予期しなかった影響を測定すること
・事業の長所と短所を特定すること
・費用と便益の側面から事業を分析すること
・事業効果の向上の可能性を探ること
である。

方法:
本調査では外部の評価者が実施されてから半年から約1年が経過した
当事業の総括的評価(プログラムが十分に実施されたのちに行う全体的な
影響・成果の評価)を実施する。

柿もぎ活動と柿もぎ用の竹笹作りに関して
○参加者(スタッフも含め)、地元住民、そして行政担当者への聞き取り調査
○聞き取り調査の結果を基にロジックモデルの作成

※ロジックモデルとは事業がどのような効果を上げたかを、事業のために利用された資源、
計画された活動、達成したいと期待された変化や成果の関わりといった指標を用いて
体系的に図式したものである。

2009chiikisien_zu.PNG

図1.ロジックモデルの読み方


■南安曇農業高校の高校生に対する農林業被害防止に関する教育について

○授業及び実習に参加した高校生に対するアンケート調査及びフォーカス・グループ・ディスカッション
○北米環境教育連盟による「質の高い教育のためのガイドライン」を用いてのクマ授業の内容に関する評価

期待される成果:
聞き取り調査によって、事業推進者や助成金交付団体は、参加者や近隣の住民、
そして行政担当者が当事業についてどのように評価しているのかを把握することができ、
客観的に事業を振り返ることができる。またロジックモデルを作成することで
当事業に対する人的・財政的投資がどのように目標達成に貢献し、
更に事業の今後の改善をもたらすかを視覚的に理解し、その成果を戦略的にモニターし、
管理し、報告するためのシステムを生み出すことが期待される。
一方、クマ授業と電気柵の設置実習に実際に参加した高校生を対象にした
アンケート調査及びフォーカス・グループ・ディスカッションより、
これらの活動がもたらした効果(高校生の意識、知識、行動の変化等)を把握することができる。
また、授業で使われた教材をガイドラインを用いて見直すことで、
当プログラムの長所と短所、そして今後改善できる点等を発見することが期待される。

スケジュール:
2009年7月-8月 ・活動の参加者、地元住民、そして行政担当者への聞き取り調査
・授業及び実習に参加した高校生に対するアンケート調査及
びフォーカス・グループ・ディスカッション
8月-9月 ・ロジックモデルの作成
・北米環境教育連盟によるガイドラインを用いてのクマ授業の内容に関する評価

2010年07月03日

事業報告:長野(評価)

「長野県における都会の人を巻き込んだ柿もぎ活動」の事業評価
桜井良(フロリダ大学大学院)

目的:本調査では、2008年度日本クマネットワークの地域支援助成事業である長野県の「都会の人を巻き込んだ柿もぎ活動」の形成的評価(プログラムなどが開発・実施されている段階で行う評価)を実施した。評価を行った目的は、1.事業目標の達成度を測定する、2.第二次的な成果や予期しなかった影響を測定する、3.事業の長所と短所を特定する、4.事業効果の向上の可能性を探る、ことであった。

実施内容:
7月5日 サル柿大学スタッフへの聞き取り/参加者への聞き取り
7月8日・9日 下蔦木集落全戸への聞き取り/富士見町町役場職員への聞き取り
7月-8月 参加者へメールにて聞き取り/富士見町町役場農林係へメールにて聞き取り

下蔦木集落の住民への聞き取り調査
方法:2007年より「サル柿大学」の活動が行われている長野県下蔦木集落(国道の北側)の全戸(27戸)を訪問し、「サル柿大学」及びその活動に対する住民の意識に関する聞き取り調査を行った。

結果:27戸中13戸にて応対を頂き(回答率=48.1%)、その中の12戸より有効な回答を頂いた。
表1

質問内容はいわからないいいえ
サル柿大学について知っている (n=12)83.3%0%16.7%
サル柿大学の活動について肯定的な意見*を持っている(n=10)90%0%10%
サル柿大学の活動によって地域が活性化してきている (n=8)75%25%0%
サル柿大学の活動は地域に定着してきている(n=8)50%37%12.5%
* 「良いと思う」「やりがいを感じる」等

当活動の長所については
「都会の人々との交流ができる。今のところ集落のみんなで楽しくやっている。」(男性Aさん2009/7/8)
「都会の人に体験してもらって農家の人の励みになる。根付いてくれれば、過疎もなくなる。」(男性Fさん2009/7/8)といった回答があった。
当活動の短所については
「活性化という抽象的な目標ではこのままいくと空中分解してしまう。」(男性Aさん2009/7/8)
「実績に結び付いていないのではないか、という声もある。」(男性Bさん2009/7/8)といった回答を頂いた。

また、野生動物による農作物被害については、この問いに回答頂いた5戸全ての回答者が「野生動物による農作物被害は減ってきている。」と答えた。

更に、活動により地域に、そして住民に変化はあったかという質問に対しては、
「協力性が強まった。」(男性Cさん2009/7/8)
「いつもと同じメンバーが出ているが、最初は出ていない人も出るようになった。」(女性Aさん2009/7/8)といった回答があった。

ロジックモデルの作成:以上の結果と都会から来た活動の参加者(2人)、富士見町役場新しいまちづくり係(1人)、そして「サル柿大学」のスタッフ(2人)への聞き取り調査の結果を踏まえ、事業の計画と実施、及び評価を効果的に行うためにロジックモデルを作成した。
表2



資源事業の活動意図した成果
投資されたもの活動の内容参加者短期的目標中期的目標長期的目標
▪資金: 助成金等
▪スタッフ: 2人/ 非常勤のインストラクター
▪協力: 富士見町町役場
▪資源: 柿の木、 農作地等
▪柿もぎ活動 (8月28日、11月1日、8日)
▪電気さくの設置(7月12日)
▪参加者:20-25人/各活動日
▪参加者: 2人
▪野生動物による被害の減少
▪野生動物問題に対する対処能力の向上
▪ 活動に対する認識と理解の向上(83.3%の回答者が活動について知っていた)
▪活動を通しての地域の活性化(75%の回答者が活動によって地域が活性化してきていると回答した)
▪活動の地域への定着(50%の回答者が活動が地域に定着してきていると回答した)
▪住民が地域に愛着と誇りを感じるようになり、自主的に地域を守る活動を始める


聞き取り調査にて何人かの住民は「活動を通して地域に協力という意識が生まれた」と話しており、また町役場職員も「活動により下蔦木は自立した」と話しており、サル柿大学は一定の成果を上げ、地域に変化をもたらしていることが分かる。過半数の回答者が活動に対して肯定的な意見を持っており、また地域が活性化してきていると答えており、活動が短期的・中期的目標を達成しつつあることがうかがえる。しかし、スタッフが話すような「住民が地域に誇りと愛着を感じる」といった長期的な目標を達成するためにはサル柿大学の活動は今後も継続的に運営される必要があり、またその効果の測定のためには、継続的な調査(評価)が必要であり、その手法も聞き取り調査だけでなく、直接観察、関与など多様な手法を併用する必要がある。

本調査を踏まえた上でのサル柿大学の活動に対する提言:1.目標の達成度を示す具体的な指標(インジケーター)の必要性、2.野生動物による被害の増減を測るための体系的・継続的な被害面積・金額等のモニタリングの必要性。


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全戸での聞き取り調査を実施した下蔦木集落

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農作業をしている住民にも聞き取りを行った