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事業報告:岩手

平成21年度日本クマネットワーク地域支援事業(岩手県盛岡市)
岩手県:藤村正樹(岩手県ツキノワグマ研究会・事務局)

目的:岩手県盛岡市で実施されている官学民によるクマ被害対策活動への支援。

本年度事業と結果:ツキノワグマによる被害が毎年発生し、複数のクマが有害駆除で捕殺されている盛岡市猪去地区の自治会では、岩手大学の教授、学生、盛岡市動物公園公社の獣医師、盛岡市の担当者、猟友会関係者からの支援を受け、平成19年度からクマ被害対策に取り組んでいる。

本年度の支援事業では、猪去地区自治会が実施しているクマ被害対策において、自治会から要望のあったセンサー連動の威嚇音発生装置(写真)を提供した。それによって、電気柵ではカバーできない地域でのクマの侵入防止に一定の効果が認められ、地域の被害防除の取組の助けとなった。

さらに、JBNが提供したセンサー連動の威嚇音発生装置の効果が高く評価を受け、翌年(平成22年)は猪去地区のNGOが盛岡市と協議を行い、センサー連動の威嚇音発生装置を自ら購入することに繋がった。

また、10月25日に開催された「猪去の里祭」においては、猪去自治会と岩手大学ツキノワグマ研究会が共同企画した、岩手大学クマ研学生と地域住民との交流会を、本事業では支援を行った。地域住民を対象とした学生によるクマの調査研究の発表は、住民のクマに対する理解と、クマ被害防除の取組に対する認識を深めることに役立った。

以上のことから、野生動物(ツキノワグマ)の被害を恒常的に受け続け、マイナスのマインドに流される傾向があり、且つ地域内の連帯も薄れつつあった都市近郊の農耕地域において、外部からの助言、労力、資金(資材)などの提供を上手に行えば、地域の結束を強め、問題に積極的に対処(被害対策)しようというプラスのマインドに転換することが可能であることが示唆された。ただし、あくまで主人公は対象となる地域の住民であって、外部からの提供を快く受け入れて頂けるように、両者の間に入ってコーディネイトする機関(団体)や人が必要である。

岩手県盛岡市で実施されている官学民によるクマ被害対策活動が比較的順調に推移している原因として、

1. 猪去地区をフィールドにした岩手県大学ツキノワグマ研究会の長年の実績(調査、研究)により、地域住民に一定の理解と外部の人間を受け入れる土壌が作られていた。
2. 学生の活動や地域の取組を支援する岩手大学の体制が整えられていた。
3. 地元住民と外部との両者を上手くコーディネイトしてくれる人材が、行政(盛岡市農政部)の中にいた。
4. 盛岡市動物園公社や猟友会、岩手県ツキノワグマ研究会など、地域の取組をバックアップする団体や人材が揃っていた。
5. 都市部近郊という地域的特色として、外部の人間や団体、新しい考えや技術を比較的受け入れやすい土壌であった。ただし、このことは筆者の個人的な感想である、

今後の課題と考察:今後モチベーションをどう維持し続けるかが課題だと思う。仮に外部からの支援が無くなったとしても、地域住民の自助努力により被害対策が維持され、結果的に被害が軽減され人とクマとの共存が図られることが望ましい。


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購入した威嚇音発生装置