日本クマネットワーク(JBN)
人とクマの共生をはかるための活動と情報交換を行っているNGO組織です。
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2010年の日本各地域でのクマの動向について(暫定版)

 今年のクマの出没状況について,JBNとして収集した情報(暫定版)を掲載いたします。 ご覧になっていただければお分かりになるように,状況は地域によって異なるようです。

 JBNとしては,クマの出没が終息すると考えられる12月下旬に,関係するJBN役員が参集しての検討会を開催して,さらに精査な情報の取りまとめを行う予定です。これらの結果については,レポートとしての刊行や,年明けの1~2月に一般向けのシンポジウムにより発信することを検討しています。
 科学的・客観的データに基づいた情報の発信を,心がけていきたいと考えております。

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投稿日:2010年12月16日

【重要】 昨今のツキノワグマの出没について

はじめに

 秋に入り,各地でツキノワグマ(以下,クマ)の出没が報じられています。大量出没の規模,地理的範囲,原因については,詳細は不明であり,正確な状況把握のためには、しばらく時間が必要です。また,現在,とられている対策の問題点について検討する必要もあると考えられます。 ここでは, JBNとしての現在の状況についての見解をまとめてあります。また近々,JBNがネットワークを通して得た各地の情報の公開を行う予定です。

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クマの行動について

 冬眠を控えた秋期(8月下旬から9月以降)に,クマは夏の行動パターンから秋の行動パターンにシフトを行い,デンプンや脂質に富んだ堅果類(ブナ,イヌブナ,ミズナラ,コナラ,クリ)を大量に摂食するようになります。しかし堅果類の結実量には植物側の生理により年変動があり,豊作や凶作は不定期な期間をおいて起こります。そのため,クマは堅果類の配置や量にあわせてその採餌場所を変えますが,特に凶作年にはクマ自身の生存を確保するために,通常の生活場所とは異なる土地に食物を探索にでることが知られています。このことはクマにとって異常な行動ではなく,このような柔軟性がクマの生存を支えてきたと考えられます。ただしこのような探索活動は広大な範囲におよぶことがあり,その行き先で人間との軋轢を起こすきっかけとなります。

2010年秋にクマが人家周辺に出現している理由について

 直接的な原因と,間接的な原因が考えられます。

 間接的な原因として,クマの生活空間と,人の生活空間が近接してきていることがあります。里山と呼ばれる地域での過疎化や高齢化は,人とクマをはじめとした野生動物の緩衝帯としての機能を失わせています。以前は薪炭林や焼き畑として利用され開放的な景観を呈していた里山は,現在では成長した広葉樹に覆われ,クマの利用できる果実を実らせています。またそうした里山に出現するクマを追い返す活力も,多くの山村からなくなってきています。1878年と2003年に環境省が行ったクマの分布域調査では,東日本を中心に面積が19%増加しています。
 直接的な原因としては,堅果類の不作があります。特に今年のブナ,イヌブナ,ミズナラ結実については凶作の傾向が強い可能性があります。ただし比較的低標高地に分布するコナラやクリについては局所的に結実している場所もあります。そのため,クマはこうした利用可能なクリやコナラを求めて低標高地,すなわち人の生活空間周辺に移動してきている可能性があります。また生活空間周辺には,カキなどの果樹,コンポストや残飯などの人間由来の食物,養魚場や畜産場の人工飼料,飼いイヌなどのペットフードが存在します。そのためこうした魅力的で簡単に入手できる食物に気付いたクマは,そこに執着するようになっている可能性があります。一度そうした食物に執着したクマは,多少の危険を冒しても,繰り返し出現するようになります。
 地域によっては,ナラ類の集団枯損も,食物不足を助長させている可能性がありますが、大量出没の直接的な原因ではないと、考えられます。夏の猛暑の影響については,今後の様々な角度から検討が必要です。

人家周辺で人身事故が起こることについて

 クマが人を襲う大きな理由は,クマがクマ自身の身を守るための防御的な攻撃です。つまり,避けられない距離や,避けられない空間などの状況で人と出会ってしまった際に逃げるための突破口をつくるために人を攻撃します。特に人里に出てきているクマは,普段の行動圏を離れ,人と近い位置で活動しているため,高い緊張状態にあることも予想されます。クマは通常は昼行性ですが,人里で食物を探す時は,夜行性にその行動>を変化させせることでも,そのことが伺われます。このような緊張状態で人と遭遇することにより,山の中で人がクマと会う時よりも,人身事故に発展する場合が多くなっているとも考えられます。また,人と出会って逃走に移ったクマが,人家周辺ではさらに別の人に会うなど,パニック状態に陥った状態で多重事故を引き起こしている可能性もあります。

今後求められること

 こうした事態を解決するための簡単な答えはありません。  しかし、次のような対処療法的も有効です。食物を探索して大きな移動を繰り返しているクマにとっては、集落、農地の中と周辺にある果樹の収穫,残飯,家畜飼料,ペットフードは、魅力的な食物であり、彼らを集落、農地に引きける要因になっています。これらの潜在的なクマの適切な管理が必要です。食物の味を覚える前であれば,電気柵設置や果樹へのトタン巻きなどの物理的なバリアも効果的です。

 ただし長期的には,以下のような事項について,今回のような事態が起きてからではなく,平素から取り組むことが一番求められます。
(1)地域のクマの状況を把握する(どの位の頭数のクマがどのあたりに生活しているのか)
(2)クマの状況の把握は簡単なことではありませんが,少なくとも傾向を見るために経年的にその結果のモニタリングを続ける
(3)以上の科学的データを基盤に,地域のクマの個体管理や分布管理を,行政や地域が協働して,合意の上に策定・推進する

今後について

 JBNでは,この秋のクマの実態について,クマが冬眠に入り事態が終息した後,各地での報告を取りまとめるワークショップを開催し,その結果についてはシンポジウムなどで一般の方々に報告をさせていただくことを検討しています。


大量出没について要望書を提出(2010/10/28)

 JBNでは、ツキノワグマの大量出没についてWWFJと連名で首相、環境大臣、農林水産大臣宛に要望書を提出しました。

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投稿日:2010年10月27日